育児と肩こり ーお母さんの抱っこ病ー

育児中の女性の多くに現れる重度の肩こりに注目してみます。

お母さんの肩こりはマッサージなどで治療してもなかなか変わらない、むしろどんどん悪化してしまうケースが目立ちます。

抱っこの負担

実際にお体を拝見すると、上肢帯と体幹の広範囲に渡る緊張があります。具体的には肩上部,肩甲間部,背腰部,前胸部,頸部,頭,そして腕です。そして大抵、臀部や前脛部(膝下の前側)まで圧痛反応が出ます。前胸部と腕については、パソコン作業やスマートフォン疲れの重い症状に近いです。

育児中の場合の特徴として、

  1. 赤ちゃん・幼児の抱きかかえ時間の多さ
    →直接的な腕と胸,背部の筋疲労の限界突破による緊張・凝り
    赤ちゃんは日増しに重くなっていくので、どんどん大変に!
  2. 四六時中気を付けていなければならないという緊張感、授乳や夜泣きによる睡眠不足
    →心因性の疲労による交感神経優位の持続による過緊張、所謂ストレス凝り

この両面に対するアプローチが育児中の肩こり対策のポイントになります。

首や肩のみの施術では歯が立ちません。バリバリのガチガチですから。そこに闇雲な力押し施術を恒常化してしまうと、筋を傷め、より重度の凝りを産んでしまいます。プロの端くれとしては、このような施術は論外と言わざるを得ません。

  1.  筋疲労からの凝りには
    抱きかかえ等で使う上腕二頭筋,三角筋腕の治療が重要,大胸筋,などや前腕屈筋群,肩甲挙筋など。背筋腹筋から、それを支える臀部~下肢。特に腕から胸(可能な範囲で)にかけての治療が大きな比重を占めます。
    長時間の負担が続くので、持続的な効果があるキネシオテーピングも有効です。
    そして抱っこをできる範囲で減らす方向に。やむを得ず抱っこするとしても、支える腕を片方に偏らないように注意するだけでも多少は違ってきます。
  2. ストレス性の凝りには
    ストレス・興奮による過緊張の緩和には、はな治療室が重視する頭部末端徹底治療です。優しく柔らかく。
    精神鎮静作用のある墨や艾を使ったアプローチも。

1の直接的アプローチと2の間接的な緊張緩和の匙加減は個々によって変わります。「やはり直につらいところを触って欲しい!」という欲求も無下にスルーしてしまうと、それがストレスにもなるので、その要望が強い方には、1の直接的な患部をしっかり施術し、納得していただいて2に移行します。

仕事の疲れやストレスは、家に帰って自分を解放する時間があります。しかし育児にはそれがない。出張治療での1時間だけで、頻繁に赤ちゃんが泣くので施術を頻繁に中断・・・という事例が間々あります。つらい症状をどうにかするための時間ですらリラックスできない。育児を手伝ってくれる人がいない場合、相当な負担がお母さんにはのしかかるのです。

育児協力者の存在の有無の差は大きいです。赤ちゃんにかかりきりになる時間と体への負担は比例します。時間的・肉体的な負担のみならず、緊張・ストレスの軽減が重要です。よって夫や親(できれば遠慮のいらない実母)などの育児協力体制の充実も大事です。

あながち極端なことではなく、精神過緊張状態からの解放だけでも肩こりは改善します。逆を辿って、物理刺激である指圧マッサージによって効果的にストレス反応箇所を緩めることができれば、精神状態をプラスに振る効果が望めるのです。

はな治療室では腕の治療を重視しています。これには筋へ直接的な効果と、自律神経系を介した沈静効果の両面があるからです。

2015年5月22日 | カテゴリー : 治療雑話 | 投稿者 : はな治療室